2012年10月26日金曜日

小説家の渡辺さん(リアル編)


先日の火曜日の晩、コピーライターであり、作家であり、釣り人であり、呑み人であられる渡辺裕一さんと、50代の女性の生き方を応援するウェブサイトBonjour 50'sの代表でいらっしゃる田中清美さんと、KONTRAPUNKTのデザイナーの田中啓一さんとお食事をするという贅沢な機会に恵まれた。
前の日記にも書いたように、私がサントリーペンギンCMのファンである事を知った田中啓一さんが、CMのコピーの作者でいらした渡辺さんをご紹介下さったのがきっかけだった。

それからは当ブログにコメントを頂いたり、私も渡辺さんの「酒の肴日記」
に足繁く通っては、時々おそるおそる(コメント欄の敷居が高いので...)コメントさせて頂いていた。そのまま出版化された方が良いのではないかと思う程の文面のEメールも、沢山頂いた。 ご著書の「小説家の開高さん」も、本がクタクタになる程読み込んでいたが、何しろ現実にお会いした事はなかったので、勝手なイメージばかりが膨らんだ。
そのイメージとは、眼鏡、やや丸顔、少し気難しく哲学的なお顔付き、モスグリーン色のジャンパー、等が合わさったものだった。また、ブログ上で、いつも髪型は白髪を短く刈り上げている、と書かれていたにも関わらず、私の脳が作り上げた「ザ・勝手」なイメージ上ではベートーベンのような、モシャモシャの髪型をされていた。

その為、代官山の素敵なビストロで先にビールを飲まれていた本モノの渡辺さんと目が合った時、「あれ?あの方ではないよね?」と戸惑ってしまった。そこには、シュッとされていて、ボーダーシャツを爽やかに着こなすスタイリッシュな紳士がビールを飲んでいたからである。ドギマギを抑えつつ、「はじめまして!」と握手を求めるも、私の頭の中は、まだまだ脳のギャップ部分を一致させる作業でシロクロバズバズ言っていた。とても、かつて蟹工船で過酷な労働をしたり、荒くれた海や男達とやり合っていた方には見えない。

しかし、美味しい赤ワインを頂きながらお話しするに連れ、「やはり、この方は本モノの渡辺裕一さんに違いないのではないか」と確信した。(始めから、ご本人なのですが...)
まず、お話しされる事が、全て面白かった。どんな話題になっても、当たり前のように、シュルシュル、シュルリと手品のように抱腹絶倒のエピソードが飛び出す。同じエピソードを面白い文章にするのも難しいが、アドリブで面白く喋るというのもまた、同様に難しい事だと思う。渡辺さんは、奇跡的に両方を兼ね揃えていらっしゃる方だと思った。

それから、「これはもう、ご本人に違いない」(だから、始めから本モノなのに...)と確信したもう一つの決定打は、「目」であった。何と言うか深い紺碧のような印象で、荒れた海も穏やかな海も見つめて来られた、色んな青をたたえた目をされていた。

そんな事を勝手にフムフム納得しながら、楽しいお話しに大笑い、唸ってしまうほど美味しいお料理(トリッパのトマト煮に、 白レバー、渡り蟹のパスタが特に美味しかった)と美味しいワインをガブガブ頂いていたら、あっという間に時は過ぎて行った。(終電に滑り込んだという事は、6時間程経っていた事になる。楽し過ぎたので2時間くらいに感じた。)

帰宅後、贅沢な夕べの余韻を噛み締めつつ(ヘパリーゼも飲みつつ)、床に就いた。
翌日、「リアル渡辺裕一さん」にお会いした今、改めて文章を読み返したらどう感じるだろうと思い、「酒の肴日記」を訪れると、ナント私についての記事が書かれていて、さらには恐れ多いほど最高級の賛辞を頂いていて、ひっくり返りそうになった。夜中にも関わらず飛んで跳ねて喜んでしまった。こんなに嬉しい言葉を頂いたら、この先数年は落ち込む事なく生きて行けるだろうと思う。ニヤニヤしながら既に100回以上は読ませて頂いた。

今朝は、"Bonjour 50's"に、渡辺さんが連載をされている「クラシック便り」でご紹介をされていた、バッハの「無伴奏チェロ組曲」を大音量で流しつつ、秋の澄んだ空気を胸一杯に吸い込んだ。

窓を開けると、この素晴らしい出会いの喜びに共感するように、秋空にトンボが戯れていた。



余談ですが、 今回は全員が他人同士なのに、偶然「渡辺」か「田中」という名字で、もれなくB型という凄い会でした。